生前贈与は相続税対策における最も有効な手段、住宅資金や教育資金の特例もあり、上手に利用すれば、大きな節税効果が期待できます。

税制改正で利便性が増した生前贈与を徹底活用
平成27年1月1日以降の贈与税に関して、効率よく税率が一部緩和され、新たな特例も設けられました。相続より贈与を優遇するという大きな流れに基づいています。 相続税対策において大きな武器となるのが「生前贈与」。 まず、計画的に資産を贈与することで、相続時に課税される財産を、無駄なく減らすことができます。贈与を受けた資金などを生活費や教育費に充てられるので、子どもや孫の家計支援にもつながります。その背景には、高齢化社会である現在、80歳を超えた親の遺産を60歳すぎの子どもが相続するといった「老老相続」事例が急増し、若い世代への資産移転が進みにくい現状があります。 最もお金が必要な30代や40代にとって、親からの生前贈与を受けられれば家計の助けになり、経済活性化にもつながると言うわけで、政府の主眼がここにあると言われています。 生前贈与には年間の非課税枠が110万円の「一般贈与制度（暦年課税）」と、非課税枠が2500万円の「相続時精算課税制度」の大きく二つの方法があります。 どちらも使い勝手はよい反面、その使い方を間違えると、贈与税は低い金額でも高い税率が設定されているため、重い税金を課せられることになりかねませんので注意が必要です。

贈与税の税率構造の見直し
贈与税の税率構造が下記図表のように見直しをされて、贈与税が若干安くなります。この改正は、平成27年1月1日以後の贈与から適用になります。

【事例】父親から500万円贈与を受けた場合
現行：（500万円−基礎控除110万円）×20%−25万円=53万円
改正後：（500万円−110万円）×15%−10万円=48万5000円
贈与者の区分に応じて税率が変わり、その税率も細分化されました。

相続時精算課税の適用対象者の拡大
相続時精算課税の適用対象者が拡大されます（平成27年1月1日以後の贈与から適用。）

贈与者
●現行「65歳以上」
→改正後「60歳以上」

受贈者
現行「20歳以上の子（※）」
→改正後「20歳以上の孫も加える」
※子が既に亡くなっていて推定相続人になっている孫を含む

相続時精算課税は、経済活性対策です。贈与税を2500万円まで課されないことにより、贈与をしやすくして、贈与を受けた人がお金を使って景気が良くなることを期待しています。

トラブル防止のため、贈与契約書を作成しましょう
双方の意思をしっかりと書面に残す

贈与税はもらった人が支払う
一度に贈与し過ぎて子や孫が納税できなくなる場合に注意

もらった人が自由に使える状態にする
通帳や印鑑は贈与する相手に必ず渡しましょう

贈与総額はあらかじめ決めない
総額を事前に決めて毎年分割で渡すと、一括贈与として見なされ総額に対して課税される場合も

生活費・教育費はその都度、必要なだけ
扶養義務者の学費や下宿費などの都度贈与には非課税

借金の肩代わりは贈与税の対象になります
ただし、当人がリストラなどで収入がなくなり、返済困難な場合の肩代わりは非課税

相続開始3年以内の贈与は相続税の課税対象に
相続人への贈与に対する3年ルールに注意