生前贈与効果（生命保険編）
●「生前贈与」と「生命保険」を上手に組み合わせることで、相続税の節税と納税資金の準備というふたつの対策効果が期待できます。

●例えば、財産を持っている父親が子に保険料相当額を毎年贈与し、子はそれを元に【契約者=子・被保険者=父親・死亡保険金受取人=子】とする終身保険・定期保険(いわゆる死亡保険)に加入する方法があります。

●この活用法のポイントは、
　1.贈与によって親の財産が減少するため相続税が軽減できる
　2.死亡保険金によって相続税の納税資金が準備できる
　3.相続時の死亡保険金は相続税の対象でなく子の一時所得となる。一時所得の実質的な最高税率は27.6％なので、父親の相続税率が30％以上になりそうなケースでは、一時所得としたほうが有利になる場合がある
…といった点です。

●なお、この対策を実施するにあたっては次のことに注意する必要があります。
①父親の健康状態や加入時年齢によっては、このタイプの生命保険に加入できない可能性もあること
②毎年の贈与税も考慮したうえで総合的に検討すること
③贈与を適性と認められるためにも、次のようにきちんと証拠書類を残しておくこと
　1.贈与契約書を毎年作成する
　2.110万円超の贈与をしたら、必ず贈与税の申告をする
　3.贈与税の申告書控は整理して保管しておく
　4.生命保険料は受贈者(子・孫など)の生命保険料控除とする
　5.受贈者は専用の預金口座を開設し保険料を支払う
　6.通帳、印鑑の保管は受贈者自身で行う

子への生前贈与効果
●贈与税には年間110万円の非課税枠があり、この金額以内なら贈与税はかかりませんし、超えたとしてもその超えた部分に対してのみ課税されます。この場合の1年間とは1月1日から12月31日までをいい、また非課税枠は贈与を受けた者一人当りにつき適用される金額です。このような贈与を暦年課税制度といいます。

●この仕組みを利用して、例えば毎年110万円ずつ複数の子に現金贈与を行っていけば、贈与税を払うことなく親の財産を子に移転することが可能になります。
　例えば、親が3人の子に毎年110万円ずつ10年間贈与していけば、親の相続財産は10年間で3300万円減少し相続税の節税につながります。また子一人当りへの1年間の贈与額も非課税枠の範囲内ですので贈与税はかかりません。このように毎年繰り返し贈与していくごとを連年贈与といい、実施にあたっては次のような税務上の注意点があります。

●たとえば子に「毎年110万円ずつ10年間にわたって贈与する」という契約をしたならば、1年ごとに110万円ずつ贈与を受けると考えるのではなく、最初の年に10年間に渡り毎年110万円ずつの給付を受ける権利(有期定期金に関する権利)の贈与を受けたものとして贈与税の申告が必要となります。
　そうなると最初の年にまとまった金額が贈与されたものとして認識されますので、贈与税がドーンとかかってきます。これでは長年コツコツと無税の贈与を続けてきたとしてもご破算にされ、しかもバカ高い贈与税まで支払うことになります。

●ただしこれが、「毎年110万円ずつ10年間にわたって贈与する」と最初の年に決めて実行したのではなく、「たまたま毎年子に110万円ずつ10年間贈与していた」ということであれば有期定期金に関する権利の贈与には該当せず、1年間に110万円を贈与されていただけなので贈与税の申告は必要ないということになります。しかし、同額を毎年贈与していると、税務署に「1100万円の贈与を単に10年に分けているのだな」と誤解される可能性があります。

●税務署とトラブルにならないための対策としては、以下のことが考えられます。
　●毎年、贈与する金額を変える
　●毎年、贈与をする日を変える
　●毎年、贈与をするごとに贈与契約を結ぶ
　●「贈与を受けた」という証拠を作る。例えば、銀行振り込みや、基礎控除額を上回る贈与をあえてして、贈与税申告書を作成・保存し納税する(なお、実行に当っては、税理士等の専門家にご相談することをおすすめします)

●贈与税の税率は累進税率で、贈与額が多くなればなるほど税率も高くなってしまいます。この贈与税率は相続税に比べて高くなっていますので、贈与額によっては、生前贈与などせずにそのまま相続税を払ったほうが安くなる場合もあります。

●なお、相続開始前3年以内の贈与については、贈与税でなく相続税の対象になります。贈与を受けたときに払ったその間の贈与税については相続税との二重課税にならないように調整されます。

●平成23年中の親から子ヘ等の住宅取得資金の贈与については、110万円の基礎控除に加え、プラス1000万円までは贈与税は非課税となります。(確定申告等、一定の要件あり)

●贈与税には暦年課税制度のほかに、相続時精算課税という制度があります。これは例えば片方の親から子一人につき累計2500万円までの贈与なら贈与税はかからないというものですが、ごの場合の生前贈与額は親の死亡時に親の相続財産に加算されて相続税が計算されますので一概に節税対策になるとは限りません。ご注意ください。