遺産分割事件の裁判所で解決方法：調停､審判､認容ってなに？
遺産分割について当事者同士（場合によっては、代理人として立てた弁護士）で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所で解決を図ることになります。

家庭裁判所は、家庭のトラブルを主に扱います。家庭内のトラブルは、法律的な観点で判断するよりも、円満に解決することを第一に考えることが必要です。このため、家庭裁判所では調停委員という第三者が間に入って、話し合いをすることになります。これを「調停」と言います。調停では、当事者が一堂に会することは少なく、調停委員が交互に当事者の話を聞き、妥協できそうな調停案を提示していきます。調停がまとまった場合を「調停成立」と言い、強制力がある調停調書が作成されます。

調停には、内容によっていくつかの種類に分かれています。遺産分割事件は、「乙類調停」に分類されます。乙類調停は「調停不成立」の場合は、審判手続きに移行します。乙類調停に分類される事件は、審判から申し立てることも可能です。しかし、その場合でも家庭裁判所が、調停で解決したほうが良いと判断すると、調停から始めることになります。

調停は当事者による任意の話し合いですが、審判は家事審判官が当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官が行った調査の結果に基づいて判断を決定します。申し立てが適法で、遺産分割をすべきだと認められた場合は「認容審判」となります。 申し立てが不適法もしくは遺産分割の必要がないとされた場合は「却下審判」となります。申し立てをした人は、審判の確定前であれば審判の申し立てを取り下げることもできます。

認容審判、却下審判のいずれでも不服がある場合は2 週間以内であれば不服の申し立て（「抗告」と言います。不服申し立ての期限がある抗告を「即時抗告」と言います）ができ、高等裁判所で再審理（「抗告審」と言います）をしてもらうことが出来ます。不服の申立てをしないで2 週間が過ぎた場合や高等裁判所で不服申立てが認められなかった場合には審判は確定します。

「訴訟」が一般に「裁判」とイメージされている手続きです。訴訟では、当事者から提出された証拠書類や証人の証言により、裁判官が法律に基づいた判断を行います。訴訟は公開されます。一方、調停や審判は非公開で行われます。家庭内のトラブルはプライバシーを保護する必要や、円満に解決することが第一であるため、訴訟とは違い非公開で行われるのです。調停、審判、訴訟のいずれの手続きが取れるかについては、内容によって法律で定められています。

司法統計では、「家事相談」の件数も統計が取られています（平成20 年1 月からは「家事手続案内」に名称が変更されました）。家事相談は、トラブルを解決するために家庭裁判所が利用できるか、利用できる場合には手続きはどのようにすればよいかを、家庭裁判所に相談することです。1 件につき20 分以内を目安に相談に乗ってもらえます。

相続が「争族」とならないように、相続税が掛かる掛からないに関わらず事前の準備が必要ですね。